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「なんだ、それだけか」
「お前今の話聞いて何もおかしいと思わないのかよ」
「うん? ……あれ、晴れてるんだよな太陽が出てるんだから。どうして光の道があるって見えるんだ?」
首をかしげるラオにチョウカは深いため息をついた。
「だから過去にそんなことなかったかなと思ってまずお前に聞いたんだろ。何も知らないって言うから自分で調べに来たんだよ」
「だってお前、俺が昼寝してるのにたたき起こして聞くから。寝ぼけてたんだって」
そう言うとラオも窓に近づく。ずっと快晴が続いている。雲一つない良い天気だと皆喜んでいるが、快晴が数か月も続くのはさすがにおかしい。
「純潔の三家、混血の八家。十一も一族がいて誰も何も言ってないけどな」
「じゃあいいじゃないか、何でそんなに必死に調べてるんだ」
孤児で問題児とされてきたチョウカ。そんな他人の評価もどこ吹く風で、自分のやりたいことをやりたいように生きているその太々しさはいっそ清々しい。だが珍しくその表情は固い。
「不安なんだ」
「え、熱ある?」
「へし折んぞコラ。からかうな、本気だよ」
「わかってるよ、お前の空気で。ボケただけだ」
二人の付き合いは長い。喧嘩を売られれば大喜びで買うような奴が不安だと言う。それはラオから見ればそれだけで大事だった。
「俺がただ臆病風に吹かれているだけだったら別にいい。だが……」
「空の変化は吉兆か凶兆だ。続く快晴、お前の夢。甘く見ない方がいいさ。それに今話していて思い出した、昔じいちゃんが言ってたことがある」
ラオの祖父は物知りだった。同じ話を百回ぐらいするのを抜けばとても頼りになる存在だった。
「滑り道って言ってたな」
「光の道のようなものが? 何が滑ってくるんだ」
「わからん、教えてくれなかった。そのままいなくなったし」
その言葉に沈黙がおりた。ラオがおじいちゃんっ子だったのは知っている。いなくなった時塞ぎこんで数日間部屋から出てこなかった。
「普通に考えれば、空から滑って来るなら天に住む者だろ。神様か?」
チョウカの真剣な顔にラオも顔を顰める。
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