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「虫は光に集まる。太陽に勝る光は溶岩しかない」
「そりゃそうだが」
「夜、焚き火に向かって虫が突っ込んでくるだろう。あれは光に集まるからだ。光に集まる習性は虫が月を目印にしているからだ」
「月? なるほど、それで東西南北を判断していたのか」
「昼間はそこら中が明るいから方向が定まってない。だが太陽の光より強い光を出せるのがいるとすれば」
「サカナシか!」
普段太陽の光の中に隠れている存在。過去これが姿を現したのは確認されているだけで四度。それが降りてくれば地は荒れて天上界でも天変地異が起きたと言う。しかし別に化け物の類ではない、言い伝えられている限りでは正体はわかっている。サカナシは、龍だ。
「何で普段太陽の光の中に隠れているのに地上に降りてくるのかと思ってたけど。人間の命を食い荒らす虫を操って、栄養満点になったところでその虫を自分が食べに来る。なるほど、あいつは一筋の光を作り集まったシバリたちを急降下しながら全て一気に食っているんだ」
「腹立つ! ばーか!」
龍であるラオは一気に機嫌が悪くなる。龍はあまり良い伝承がないので常々不満に思っていた。人の倍程の大きさしかないラオはまだ龍としては幼い。五十年しか生きていないので赤ん坊のようなものだ。
「一気に喰らう姿が滑り落ちてくるように見えるから滑り道ってか。落ちてくる時はあいつが腹を空かせた時。それにしたって前回確認されてからだいぶ時期が早い……そっか」
「なんだよ」
「お前のじいちゃん、サカナシと戦いに行ったんだな」
その言葉にラオは目を丸くした。
「いやでも、だって。なんでそれを周りの奴らに教えなかったんだ」
「教えて賛同してくれる奴居ると思うか。三家も八家も自分たちが偉くて凄いんだと奢ってる奴らだぞ。地上の人たちを見下して、飢え死にする人を鼻で笑って戦を起こしている様子を酒の肴にするような奴らだ」
天上界に龍はいない、不遜な仙人を嫌いだからだ。ラオの祖父がこの場所に長くいたのは、ようやく産まれた孫が戦に巻き込まれず健やかに育つようにだ。周囲の者たちは巨大な蛇が邪魔でしょうがないと嘲笑っていた。
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