龍が通るは光の道

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 雷を落とす瞬間にサカナシから飛びのいたチョウカをラオが咥えて背中に乗せる。 「死んだか?」 「いや、気絶しただけだ。後は暇人共に任せよう。今の俺たちではトドメを刺すのは無理だ。ちっとばかし刺激の強い按摩程度だな」  二人合わせても半人前以下だ、勝てるわけない。凄まじい雄叫びとともにサカナシは暴れまわってどこかへ飛んでいく。 「逃げられてやがる。三家もいたのに情けねえな」 「あいつら威張りくさってるだけだから。それにしてもサカナシの兆しを夢で見るなんて。お前実はすごいんじゃないのか?」  これだけのことになったのだ。それを夢で見ていたなんて、三家より凄い力を持っているのではないかと思った。 「俺が見たのは光の道(シバリ)だろ」 「うん?」 「俺虫嫌いだからな」 「……そういえばそうだった。お前ってちょっと残念だな」  ため息をつくラオの頭を軽く叩く。 「うるさいわ。それより、もっとうるさいのが来たぞ」  見れば三家の長老が全員こちらに来ているのが見える。その中でも中心になっているメイエが険しい表情で目の前に来た。 「一体これはどういうことか! 申開きは聞かぬぞ!」 「うるせえクソババア、男汁臭いんだよ。どこの野郎と励んできたんだ?」 「な!?」 「え、図星なの?」  鼻で笑っていたチョウカと違って驚いたようにラオが突っ込む。メイエはあまりにも下品な内容に頭に血が上っただけなのだが、ラオは言い返せなかったことに驚いて本当なのかと思ったようだ。その様子にチョウカは爆笑した。 「さて、ババアの頭が噴火する前に逃げるか」  その言葉を合図にラオは地上へ急降下する。上からは怒り狂う声がしているが、仙人たちは地上に行くのは汚らわしいと降りることはない。 「しばらく戻らないほうがいいか。別に戻る理由もないけど」 「俺はいいけど、チョウカはどうするんだよ」 「探そうぜ」 「何を」 「シュウセン様、どこかに落とされたんだろう。探して弔ってやろう」  そう言うとサカナシから吹き飛んだシュウセンの歯を見せる。それを見てラオは驚いたようだが、小さく笑った。 「お前の手癖の悪さ、さすがだな」 「どうせまたあの野郎が元気になったら光の道の夢を見る。それまでにちょっとは強くなっておかないとな。真っ先に俺らに会いに来るだろうから」 「強くなるまではせっせと(シバリ)退治だな」  笑い合う二人の目の前に、雲間から割れた太陽の光が差す。 「お、正真正銘の光の道だ」 「あそこから降りようぜ、なんか神々しいし」  そう言うや否やラオは急いで光さす場所に飛んでいく。この後、その姿を地上の人に見られて神が降臨したと追い回されるとも知らずに。  光の道はやはり、人々に希望を与えるものなのだと。およそ半年追い回されて身をもって二人は知るのだった。
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