縁(えにし)

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆  数日前。 「私がバカだった。彼女を許して、信頼関係を築きなおすべきだったんだ」  関谷明人(せきやあきと)は祈るように組んだ手を倒して、テーブルに突っ伏して泣き始める。妻である和美(かずみ)は、内心でうんざりしつつも、打ちひしがれている夫にかける言葉を探した。 ――前妻が悲惨な形で亡くなってしまった、かわいそうな夫にかける言葉を。 「そんなに自分を責めないで、彼女が死んだのは、あなたのせいじゃないわ」 「――でもっ! 彼女は体は弱かったんだっ! それを一番、よく知っていたのは私だったのにぃっ……」 「そうね。あなたの幼馴染だから、こんな結果になって心を痛めるのも分かる。だけど、彼女は最終的に不倫相手を選んだの。あなたがここまで、心を痛める必要なんてないわ」 「でもっ、でもっ、でもっ……。まさか、こんなことになるなんて」  あああああああっ……もうっ。  妻である和美の前で、再婚したことを後悔しているような夫の態度。まるで悲劇の主人公みたい振る舞い、大げさに嘆いてみせる明人の瞳には、もうなにも映っていない。 「ねぇ、明人さん。よく聞いて」  体が弱かったリホは、明人のような堅実な男性に庇護されないと生きていけないのだ。不倫をするような男と結婚するなんて、自らの寿命を縮める行為であり、結果、その通りとなった。 「リホさんはあなたの奥さんなのに不倫した。出会い系にハマって、不倫相手と再婚して、あなたの慰謝料と生活費を稼ぐために働いて」  インフルエンザに(かか)って、肺炎を引き起こして、血を吐き、もがき苦しみながら……死んだ。 「これは、彼女の自業自得で因果応報なのよ。あなたが気に病むことじゃないの」  どうして、わたしがこんな目に?
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