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0505 秘宝の行方
「恩人でも裏切られるのですか? まあ、あの信号を出したキミですから、驚きはしませんよ」
こんな時、ウィルフリードはよくも挑発的の発言を……
「てめぇぇぇ――!!!」
ケンの体から狂った怒鳴りが爆発した。
「呪ってやる!! 人の皮を被った悪魔め! 醜い、汚い泥の塊! てめぇの国、てめぇの一族、てめぇの全ての仲間を呪ってやる!!」
「やれやれ、相当憎まれたようですね」
ひどい罵声を浴びながら、ウィルフリードは気楽に笑った。
「それは当然よ」
思わず口を挟んだ。
「彼を陥れることに関して、貴女も手伝ってくれたでしょ? 一緒に呪われてますよ」
「構わない。あんたの本質が暴かれれば十分だ」
私なら、もうとっくに呪われている。
「姫様を人質にしたところで逃げられると思ってるの? あたしたち海賊を舐めんじゃないよ!」
カンナは鼻で笑って、杖でケンの顔を指した。
「ふん、いずれこうなると知っていた。てめぇらは信用出来ない奴だからな! だから……」
ケンに目から、更に凶悪な光が飛ばされた。
「賭けもの姫様の命ではない、彼女が持っている青石だ!」
「?!」
「俺の言う通りにしないと、姫様を連れて海に飛び込む! 青石と共に! どうだ、欲しいだろう、青石を!」
ケンの激しい声で、部屋の空気さえも震えたような気がした。
「青、石……」
その単語を繰り返し、ロードの目の光は消えた。操られたように硬直な動きで足を踏み出し、ケンと姫様に手を伸ばした。
「欲しい、青石が、欲しい……もう一回、俺の元……」
「やはり貴様か……!」
カンナの拳を握りつぶす。
「ロードに何をした?!!」
やはり、ロードに呪いをかけたのはケンなの?
「俺の元……」
「目を覚ませ!!クソ野郎!」
カンナは平手でロードの顔を打った。
「……カンナ、姉さん? 俺、どうした?」
目の焦点が戻ったけど、ロードはまだぼんやりしている。
カンナはケンに向かって、ケンに負けない激怒な声で言った。
「ロードは青石なんかに狂い始めたのは、貴様から青石の話を聞いてからだ!」
緋色の女海賊の怒り姿は燃える炎に見える。
「俺は、青石に狂っている?」
「まだ分からないのか! あんな価値のないボロ客船を襲う理由はどこにある?! 前もそうだった。護衛艦に敵わないと知っていても、無理矢理に稀な宝石を乗せた商船に手を出した。どれだけ損失したのか分かってるのか?! お前の船長としての能力を疑う野郎はごろごろでてくるんだ!」
「俺、俺は……違う、そんなはずが……」
カンナの怒鳴りに反応したように、ロードの体は軽く左右に揺れる。
彼は片手を上げて、自分の掌を見つめる。
「そうだ…なぜだ? なぜ青石が欲しいんだ? 俺たち、海賊だ……神力だの奇跡だの信じるもんか。青石なんか、どれだけ力のあるのものだって俺たちと関係ないはず……」
「頭の冴えたお前はどこに行った?! 船のことを誰よりも考えているお前はどこに行った?! 青石なんかのために、まだどんなことをやらかすつもり?! 公爵家の姫様を殺し、帝国に喧嘩を売るのか?!」
「違う、俺は、俺は、青石なんか……」
ロードの顔は青白になり、額に汗が滲み出た。
「違う」
ピンっと震えが止まり、ロードは今ままでのない重い声を発した。
「青石は、必ず手に入れる……!」
黒い影!
今、確かに見た。
ロードの背中から黒影が浮かび上がった!
「なるほど、それは呪いの源か……」
藍は呟きながら一歩前に出た。
「無駄だ!」
その時、ケンはまた大声を立てた。
「呪いの種は奴の心に深く植えている」
「呪いの種?! それはなんだ!」
カンナは同じくらいの大声で聞き返した。
「偶然で、俺はある魂に出会った。彼は青石の所有者だった。その石の力でほしいものを全てを得た結果、死んでいてもその石を手放すことができなかった。彼の執念は呪いにも近い存在となり、世を彷徨っていた。俺は故郷の秘術で彼を『種』の中に封じた。万が一の時に備えるためにな」
「貴様、ロードに……」
「そうだ、初めからてめぇらを信用していねぇ。残虐な海賊を相手に、俺は切り札が必要だ。だから、その種を燃やし、灰をロードの食事に盛った。狙い通り、彼はあの執念の宿主となり、青石への欲望が燃え上がった。青石を手に入らない限り、その狂い執念は彼に永遠に付き纏う!」
「貴様……!!」
「動くな!」
ケンは姫様の頸を引き絞める。
「お嬢様!」
「だ、大丈夫……殺しては…だめ…なら…きっと……みんを……」
苦しみを耐えて、姫様はかろうじて幾つの単語を吐いたけど、何を伝えたいのか全く分からない。
藍に答えを求めようとしたが。
さっきまで飛び出そうとした藍は、なぜか自然な立姿に戻った。
「これはさすがやりすぎます」
ウィルフリードは緊張感なさそうに嘆いた。
「あんたに文句を言う立場があるの?」
白目で彼を睨んだ。
「彼のこれからの人生のために、少しお仕置きをしたかっただけです。でも心配はいりません。もうすぐあれが来ます」
「あれ」は?
まさか、先の信号のこと……
「怨念よ、砕け!!」
ケンは叫びながら、姫様を抱えて船長室を飛び出した。
「逃がすもんか!」
カンナはその後を追った。
ロードは黒影に包まれたまま、意識を失ったように佇んでいる。
今は彼に構う時間はない。
私もカンナの後を追って甲板に向かった。
「奴隷をすべて解放しろ! 船をくれ! 水と食糧、航海図もな!」
ケンは姫様を人質にして、垣立にくっついている。
海風は姫様のドレスと金色の髪を伸ばし、松明の光はケンの狂った顔を照らす。
周りにいる海賊たちはその突然な出来事に呆気に取られた。
「勝手に動くな!」
カンナは命令を下した。
「彼の言う通りにしてやれ。船、水と食料の用意を、そして、奴隷たちをここに連れてこい」
「姉貴、これは一体……」
「船長の命令だ。さっさとやれ!」
前に出た中年海賊に、カンナは目配せをした。
「お前ら、ぼうっとするな、ついて来い!」
心得た中年海賊は雑魚たちを率いて船室に降りた。
カンナも分かっている。
これ以上ケンを刺激してはいけない。
でも、海賊は大人しくケンの条件を呑むとは思えない。
このまま対峙してもどうしようもない。
チャンスを作らなければ……
心臓の鼓動を抑え、長い息を吐いてから、ケンに一歩を踏み出した。
「姫様は青石を持っていることを、本当に確信できるの?」
「?!」
「私の名はフィルナ・モンド。 聞いたことはあるの? 稀世なお宝を狙い、『三日月』という名の盗賊がいる。その盗賊は、今夜あの客船に乗っていたのよ」
「盗賊、てめぇが……?!」
思った通り、ケンは私を「三日月」に連想した。
ケンだけではなく、ウィルフリードとカンナも目を開けた。
藍は、いないの?
どこかに隠れて、姫様を救うチャンスを狙っているのでしょうか。
だったら、いいけど……
「『三日月』は秘宝青石を見逃すようなことをすると思うの? サン・サイド島からずっと追ってきたのよ。 目を付けったものは、絶対に手を入れる主義だから」
「てめぇは、青石を狙う……?」
まだ少し疑っている様子だ。
普通なら、私のような女子を盗賊に連想する人はいないでしょう。ウィルフリード以外に。
「忘れたの? 私は、あの人とグルーだったのよ」
ウィルフリードに指さした。
「奴はきれいな皮を被っている極悪非道な悪党の中の悪党だったら、私は有名な盗賊でもおかしくないでしょう」
「そこまで悪口を言われるのは初めてですね」
若干の雑音を無視した。
「青石はもうとくに手に入れたのよ」
「何だと?!」
ケンは目を大きく張った。
右手をあげ、人差し指につけたサファイアの指輪を見せた。
「そう、これは青石よ」
「!!」
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