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魔女の一撃?
ちがうよね、そんな上品なもんじゃないよね。
飛び蹴りじゃんこれ絶対飛び蹴りじゃん!
ヤバい動けない。えっ足もつった?
「大変です女王様! 勇者どもがまた城内に侵、いいかがなされました!」
「あ、あの本を持て」
「はっ! どの本でございましょう?」
魔女王は腰をおさえ、恨めしげに天高く並べられたまるで弁当箱のような預言書を眺めた。
ほんっっと電子書籍化しようよ~っ!
何百年も生きてきて生まれて初めてのぎっくり腰が今って。
「覚悟しろ魔女王! 今度こそおまえを倒し、この世界に平和を取り戻してって、何してる?」
魔女王は倒れたまま悔しそうに顔を上げた。
「殺せ‥‥‥!」
いくど戦っても不敵な笑顔しか見せなかった魔女王の涙。
勇者は剣を構えたまま後ずさった。
「お、おのれ、そんな顔したって誤魔化されないぞ」
「 ふっ……こんなチャンスは二度と無かろうな。魔女が預言書を使おうとして自ら魔女の一撃を食らい勇者に首を狩られるなど……あははははっ痛っ!」
希代の美貌と魔力を誇った私がこんな終わりを迎えようとは。
「え? 何? いやっ何をする卑怯者! 動けない女相手にこのケダモノ――ッ」
「落ち着けよ。確かここの仙骨とかいう場所をだな」
え?
「少しは楽になるはずだ。子供のころ父さんに教わったんだ。辛いだろ?
家のばあちゃんがよく患ってな」
ぴきっ。
さっきまであまりの痛さに頭のどっかに四散していた呪文が盛大に甦る。
「わ――っ」
「おお勇者!」
「よく無事で」
「怪我はない?」
突然降ってきた勇者に仲間達が駆け寄った。
「魔女は? 魔女王は倒せたのか?」
「いいやまだだ」
勇者は剣をついて立ち上がる。
「俺は諦めん。行くぞ、みんな」
「おお!」
「今度こそ平和を手に入れる。そして魔女王を改心させるのだ!」
「なんて?」
「なんで赤くなってんの?」
「行くぞ――っ!」
「お、おお」
光を増した聖剣が、目の前の壁をあっという間に打ち破った。
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