愛情は感じるもの

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「さすがに亜純先生の彼に声をかけるのは気まずくて、そのお友達に話しかけたの。あの時一緒にいましたよねって。そしたらね、その人、亜純先生の彼とは友達じゃないって言ったの」  美希の言葉に亜純はこれでもかって程目を見開いた。問題は悠生の友人が別の会場にいたことではなく、友人だと思っていた2人が赤の他人だったことだ。 「え、美希先生……それってどういうことですか?」 「ネットで知り合ったんだって。元々来るはずだった友達がこれなくなって、でも事前に申し込みをしちゃってあるからネットで行ける人を募集したみたいなの。そしたら亜純先生の彼から連絡がきて一緒に参加したってわけ」 「それじゃ、その人もその時に初めて会ったってことですか?」 「うん。だから、登録していた名前はその人の本当の友達で、亜純先生の彼は全く別の人ってこと」  亜純はさあっと血の気が引いた。新井悠生という名前ももっと言えばプロフィール自体が全て嘘だったということだ。だとしたら、今まで自分が一緒にいたのは誰だったのかと急に恐ろしくなった。  亜純は慌てて電話を繋げたまま、先程撮った車検証を見返した。とにかく逃げることに必死で名前など確認していなかったが、名前の欄には奥川(おくがわ) 勇人(はやと)と書かれていた。年齢も亜純よりも2つ上だと聞いていたのに実年齢は5つも年上だった。 「え……」  ついこぼした声に、美希が電話越しに「亜純先生大丈夫?」と心配そうに声をひそめた。 「あの……私。さっきまで一緒にいたんです」 「えぇ!? ねぇ、何もされてない? 話には続きがあってね。私が亜純先生の彼のことをその男性に聞いてたら、あとから話しかけてきた女の人がいて、昔結婚詐欺にあったって言ったの!」  美希の言葉にああ、やっぱり……と納得したものの、亜純はもう少し早く知りたかったと目頭を押さえた。
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