愛情は感じるもの

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 そこにはカード入れが少なく、免許証や保険証を入れるとそれだけでいっぱいになってしまった。だから亜純は身分証明書類は別のカードケースに入れて持ち歩くようにしていたのだ。  しかし、悠生と会う時は自ら運転することがないためそのカードケースすら持っていかなかった。  それが救いになっているのは事実だ。毎回送ってもらうのも、家の近所までで実際に家の場所を教えたわけではない。  金を盗んだ時に亜純の身分証明となるものも探しただろうが見つからなかったはず。亜純は、不本意にも依に助けられたことを認めざるを得なかった。  暫くして美希がやってくると、速やかに助手席に乗り込んだ。タクシーを呼んだってよかったのだが、正直なことを言えば美希が来てくれて安心していた。  自分の不甲斐なさも羞恥心もあるが、なによりも暴力を振るわれ、それに耐えた恐怖からようやく解放された安堵の方が大きかったからだ。 「うわ……酷い。顔腫れてる」  美希は亜純の顔を見て、眉をぐっと中央に寄せた。その反応を見ただけで酷い顔をしているのだろうとわかるくらいだ。 「明日が休みでよかったです。病院へ行ってこようと思います」 「うん。それがいいよ。それと産婦人科も行きなよ。念の為アフターピル貰ってきた方がいいと思う」 「そうですね……。あんな人の子供を妊娠してたら最悪です」  亜純はそう言いながら、本当にそんなことは避けなければと思った。散々子供が欲しいと思ったが、誰の子でもいいわけじゃない。  依に子作りを手伝ってもらって、依が可愛がれないのであればその後別れて1人で育てることも考えたが、そんなバカげたことを考えられたのも相手が依だったからだ。  好きだと思って結婚した相手の子供だったからだ。けれど、悠生は違う。亜純が好きになった男は仮面を被っていただけで、本人ではなかった。  そんな男の子供を妊娠してしまったら中絶する以外に選択肢はないが、中絶したら自己嫌悪に苛まれてしまうだろう。それだけは絶対に嫌だった。
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