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美希は結婚詐欺の被害に遭った女性の話をポツリと話し始めた。内容は亜純とほぼ同じだった。
経済的に余裕のあるふりをして近付き、付き合ったのだが、その後何回か会う内にお金を貸してほしいと言ったそうだ。
全てのデート代を悠生が払い、身なりも整っており、高価な物を身につけていたため一時的な貸し借りだと信じてしまったようだ。
結婚の約束までしていたのにも関わらず、その後連絡が取れなくなった。名前で被害届を出そうにも、与えられた情報は全てデタラメで相手を特定できなかったのだ。
傷を引きずりながらも前に進もうと思って参加したパーティーに悠生がいたことで驚いたのと、同時になんの悪びれもなくパーティーに参加していたことで恐怖を感じたそうだ。
彼女は殴られるまでには至らなかったが、中には亜純と同じように傷害沙汰になった女性もいた。
しかし、同様に個人情報が特定できず誰も悠生に罪を償わせることができなかった。
「……よかったです。私がその人達の分まで罪を償わせますから」
亜純は助手席でスマホを握りしめてそう呟いた。美希は怪訝な顔をしたが、亜純が慌てて取った証拠を確認して納得した。
亜純の家に近付くと、亜純は美希に家まで行かずにここで降ろしてほしいと頼んだ。そこは悠生に降ろしてもらっていた場所だった。
もしかしたら悠生が先回りをしていて、亜純が帰ってくるのを待っているかもしれない。そう思ったのだ。
車を見つけて追ってきたら家を特定されてしまう。そう思い、念には念をと車を停めてもらうことにした。
「本当にここで大丈夫? 1人で歩いてる方が危険じゃない?」
「大丈夫です。ちょっと寄り道して帰りますから。今日は本当にありがとうございました。どうなったかまた連絡します」
亜純はお礼を言って車を降りると、近くに停車している車がないかと、人がいないことを確認した。
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