愛情は感じるもの

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 思えば千景はいつだって傍にいてくれた。依が嫉妬をする時には適度に距離をとったし、それでも絵本が出版される度に亜純に送ってくれた。  繋がりだけはずっとあったのだ。深い話をしたのは最近になってからだが、依の友人でありながら依の肩を持つようなことはしなかった。  常に中立な立場にいて、明らかに依が悪ければ亜純の味方になってくれた。離婚後、周りが腫れ物に触れるような扱いをしても、千景は前に進むことを応援してくれた。  新たな恋愛も亜純がしたいようにさせてくれたし、失敗したらその時は受け入れてくれた。  亜純は自由でいながらしっかりと羽を休める場所を用意されていた気がした。千景がいなかったら真白と依の関係を知った時に誰にも相談できなかっただろう。  2人のことを知らない第三者はきっと2人をこれでもかと言うほど叩くだけ叩いて、結局離婚する以外はなんの解決にもならなかったはず。  それに2人のことをよく知っている亜純と千景だからこそ2人を責める権利があるのだ。何も知らない赤の他人に最低だと罵ってもらっても亜純にとっては少しも嬉しくなかっただろう。  そして亜純をもっと大事にするべきだったと依に怒ってくれたのも千景だ。最初は面倒くさそうな顔をしながらも、見放さずに傍にいてくれた。  これからも傍にいると言ってくれた。その言葉に救われて、甘えてしまいたい気持ちが先行する。    私……いつの間にか千景に頼ってばかりだ……。  そう思うものの、その寄りかかれる存在が心地よくそこから自立するのは寂しい気がした。今回だって自分で後始末をしなければと思っていても、千景がついて行くと言ってくれれば素直にお願いしてしまう。    頼りたくないような頼りたいような複雑な気持ちだった。 「私……こうやって千景が一緒にいてくれるの嬉しい……」  亜純はほとんど無意識にそう呟いた。
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