新しい風

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「好きだけど……多分ずっとこのまま好き。でも、過去にしなくちゃいけないと思ってる。私は、あの子が幸せならそれでいい」  綾菜は軽く息を吐いてから「きっと幸せになってるよ。だって、真白ちゃんが一緒にいられて幸せだって思えた子でしょ? そんな人なら、きっと素敵な人に会えるよ」と言った。  綾菜にそう言われたら、不思議とそんな気がしてきた。亜純は色んな人から好かれる人間だ。だから、相手だって亜純の方から選べる。  きっと今度は相手が子供を欲しがっているかどうかを先に確かめるだろうし、依のように行動を制限するような男は選ばないはず。  お互いにもう高校生だったあの時とは違うのだ。自分で選択して失敗して学んでいく。それで最終的に何が良くてなにが悪いかを見極めて、ゴールに辿り着く。  きっと亜純にはそれができる。そもそも私の協力なんかなくても。真白はそう思いながら、亜純が依と付き合い始めた時のことを思い出した。 「そうだと思う……。幸せになるべき人だって思う」 「だったら、真白ちゃんにも幸せになってほしい。その人もいつまでも真白ちゃんのことを恨んでないと思う」 「でも私が幸せになったら、亜純は……」 「幸も不幸もその人次第で大きさなんてないんだと思う。真白ちゃんの過去は壮絶だし、幸せじゃなかったと思うけど、その人は真白ちゃんの過去を知らないでしょ。だから、自分の方が不幸だって思うかもしれない。でも真白ちゃんの過去を知ったら、自分の不幸なんて大したことないって思うかもしれない。  だけど、世の中には真白ちゃんの過去を知っても自分の方が不幸だって思う人もいると思う」 「……うん」 「だから、誰かが何を思うかじゃなくて、真白ちゃんが幸せかどうかを考えて欲しいって思う。私は……真白ちゃんとずっと一緒にいたい。私も幸せになりたい。自分の幸せを願ってわがままになれるなら、真白ちゃんと付き合ってみたい」  綾菜も少し遠回りをしながら、一生懸命訴えた。綾菜は自分の幸せを願うことをわがままだと言う。真白はやっぱり少し自分と似てると思った。  きっと綾菜もそんなに強いタイプではない。だけど、誰かの為なら強くなれる気がした。それは真白も同じ。  綾菜と一緒にいられたら、もう少し世界は明るくなって、もう少し強くなれる気がした。 「……私も、綾ちゃんとずっと一緒にいたい」  真白は一瞬躊躇ったが、こんな自分を受け入れてくれた彼女に全て委ねてみたいと思った。
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