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「付き合ってるってなんだよ。亜純がお前と付き合いたいって言ったのかよ」
依はとても信じられなかった。亜純に何度も想いを伝えても付き合えなかった。だから真白に頼ることになったのだ。
千景から付き合いと言ったところで、元夫である自分の友人と付き合うなんて、亜純がするはずがないと思った。
「2人で話し合って決めたんだよ。不思議に思うのはわかるよ。俺たちは長い間友達だったし、依とは結婚してたし。だからお互いにないって思ってた」
「じゃぁ何で……」
「亜純が色々苦しんでた。依とのことはもう忘れて、新しく恋愛をしたいって。……俺も、依が好きだった人だから好きになるつもりはかったけど、亜純とじっくり話してたら好きだったんだなって気付いた」
「気付いたってなんだよ。好きって気持ちに気付かないなんてことあるわけないだろ? 気付かなかったなら、お前の気持ちなんかその程度ってことだろ!?」
依はかあっと頭に血が上って、大きな声で叫んだ。依の亜純に対する気持ちは、どんなに頑張って隠そうとしても隠しきれないほど大きな気持ちだ。それを気付かなかったなんて言えるような人間に亜純を好きだと言う資格などないと思った。
「そんなことない。亜純のことはちゃんと好きだよ。一緒にいて穏やかでいられるし、俺が一緒にいたいと思ったんだから」
「一緒にいたいのはお前だけじゃない! そんな、簡単に……」
「簡単じゃないよ。亜純がどれだけ依のことで泣いてたかわかる? 子供が欲しいって言った亜純の気持ちより、自分の独占欲を優先したじゃん」
「そんなのお前には関係ない!」
「関係あるよ。俺は、亜純との子供なら欲しい。子供達と一緒に色んなところに行きたいし亜純が子供の側で笑ってるところを1番近くで見たい。俺にはそれがしてあげられる。だから、関係なくない」
ハッキリと芯の通った声に、依はぐっと押し黙った。千景はいつも依のことを自由にさせてくれた。依が一方的に怒っても穏やかに宥めたし、強く自分の意見を貫き通そうとすることはなかった。
けれど、今回ばかりは違った。こんなにも依の言葉を押しのけて言う千景は初めてだった。
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