五千円札は戻ってくる

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「めぇ~っ」  脳天気そうな山羊の鳴き声が、耳に入ってきた。  ゴールデンウィークとなり、実家に帰省中の俺は今、山羊小屋にいる。そう、実家では親が山羊を飼育しているのだ。 「お前に美味しいものを食べさせてやるぞ」  例のおんぼろ五千円札を財布から取り出し、山羊の口元に差し出す。  むしゃむしゃ、むしゃむしゃ。  山羊は美味しそうに五千円札を食べきった。  山羊は紙を食べてしまう――そう言われているとはいえ、山羊に紙を食べさせるのは、本当はよくない。インクや薬品が使われている場合があるからだ。  だが、紙幣一枚分なら腹を壊したりしないだろう。許せ。どうしても始末したかったのだ。  山羊には悪いことしたが、これで完璧だ。  そう思っていた。
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