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「そんな、馬鹿な!」
この前のと同じ五千円札。きっとそうだ。
記番号は、IとOを除く二十四種類のアルファベット一文字または二文字、続いて六桁の数字、最後に二十四種類のアルファベット一文字という組み合わせになっており、百二十九億六千万枚で一巡するといわれている。
日本の人口の百倍以上流通していない限り、同じ記番号のものは存在しないのだ。
国民の一人ひとりが、五千円札を百枚以上持っていることなんてありえないし、最近は電子マネーで決済する人が多いから、流通量はそんなに多くないと思うのだ。
だが、目の前にあるのは、この前と同じ記番号の五千円札。
「また会えたね」
女性のものと思われる声。
「誰だ!?」
周囲を見回す。だが、それらしき人物は見当たらない。
まさか……
手元の五千円札に目を落とす。
五千円札に描かれている着物姿の女性。
一見、無表情に見えるが、どこか微笑んでいるような気がする。
この五千円札には何かが取り憑いているのだろうか。
「……はっ!」
オカルト的な考えに頭の中が支配されそうになっていた俺だが、あることに気が付いた。
同じ券売機を使い、毎回五千円分チャージ。
五千円札が手元にある時は五千円札を入れ、ない時は一万円札を入れる。
同じ券売機でこれを繰り返していれば、同じ五千円札が戻ってきても不思議ではない。
「そういうことか」
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