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ああ、この感触だ。木の手になじむ、なんともいえぬ快い感触。
鉛筆をもって、一つ一つ、文字をつづる。
シャープペンシルが台頭してくる中で、思えば私は、今まで一度だってそれを使わなかった。
しわの刻まれ始めた手で、「サッサッサッ」と鉛筆と紙がこすれる感覚を味わう。
わたしも老けたものだ。
書き重ねた思い出。そのひとつひとつを思い出すことは難しい。だが確かに、それは私の中にある。
その中に、私は、人生を感じるのだ。名残惜しさの中書き終えた文章には、鉛筆の温かさがまだ残っているように感じた。
つけていた机の照明を切る。そして、まだ長い鉛筆を筆箱の中にしまった。
第「鉛筆」 作者 ヒカリ
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