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出家
出家して、尼姿になりましたが、
思い迷う気持ちは残っておりました。
妹尼は、
「あなたがすてきな男性と結ばれるように、と願をかけてきたのに…」
と嘆き、私の気持ちを理解しがたいようでした。
それでも、気持ちに区切りを付けた私は、
小野の人々とも打ち解け、親しくなってゆき、仏道修行も怠りなく、勤行や経典の勉強も、生き生きと取り組んでいきました。
新春のある日
一人の男が「主人が寵愛した亡き姫のため、美しい装束を仕立ててもらいたい」と小野を訪ねてきました。
薫の君様の使用人で、装束は私の一周忌のためでした。
使用人は「ご主人様は、今でも亡くなった姫君の事をお忘れになれず、こうして一周忌も心を込めて営まれる準備をされているのです。」と言うのです。
もう私のことなどお見捨てになったと思われた薫の君様でさえ、それほどお嘆きなのであれば、母の嘆きはどれほどであろうかと思いました。
薫の君様や匂の宮様には、私が生きていることを知られたくはありません。もう、男君に頼る生き方はしたくありませんでした。それでも、母にだけはどうにかして知らせる術はないかと思うのでした。
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