発覚

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発覚

薫の君様と匂の宮様の使者が宇治で鉢合わせしてしまい、ついに恐れていた事態になりました。 薫の君様は私と匂の宮様の密通を知ってしまわれたのです。 薫の君様からの文には 「あなたが心変わりしているとは知らなかった。私を待っているとばかり思っていたよ。 あなたが悩ましげにしていた訳が分かりました。大人になられたのだと勘違いして喜んでいた私は愚か者です。 これ以上私を笑い者にしてくださるな」とありました。 薫の君様が心の中で私のことを (匂の宮のおもちゃにお似合いか。 元々妻にする気はなかった。かといって、匂の宮にいいようにさせるのもしゃくだ。どうせ宮様も直ぐ飽きてしまわれるのだ)と考えているとは思いもよりません。 (お一人に決められないのだから、 死ぬしかない…世間の笑い者になり、さすらい、恥を曝して生きるくらいなら…) 私の結論は、そこに行き着くのでした。 そう決意し、他人に読まれて困る手紙は破って、身の回りを片付けていきました。 私の住む山荘周辺の警備は異様なまでに厳重になり、薫の君様の文もあれ以来途絶えたまま…   三月二十日過ぎ 匂の宮様から「二十八日の夜、必ず迎えに行く」と言伝があり、決意したのに、また私は心を乱されてしまいました。 結局、“お待ちしています”とも、“私のことはお忘れ下さい”と突き放す事も出来ず匂の宮様にお返事を書くことが出来ません。 匂の宮様は、私から返事がないので、必死の思いで宇治を訪れたものの、厳重な警備に、近づく事も出来ずお帰りになったそうです。 それを聞いた私は、いよいよ死を決意し (親に先立つ不孝をお許しください)と念じながら、匂の宮様と母に決別の文を認めました。 川を遠く眺めて死が近いと感じます。 女房たちは、上京の準備に忙しくにぎやかな声がしています…でも、もう私には関係のないこと…
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