キャベツ畑

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 日が西にある家々の上で赤く空を染めている。小学校三年生の俊哉(としや)は道を渡って家の玄関を開ける。背後で車の通り過ぎる音が聞こえた。俊哉の住む築三年で二階建ての家の前には二車線の道路がある。この町は田舎なので車がないと生活できない地域だ。だから俊哉もお父さんやお母さんの運転でその道路を行き来する。道路を挟んで家の目の前は他人の畑だ。その奥、車で三分、歩いて十分の場所に俊哉の家の畑がある。二車線の道路から少し南へ行った農道の横で広さは1ヘクタールと広い。畑の世話をしているのは主に祖母と祖父で父と母は会社員だ。  ジャスミンの芳香剤のする玄関をあがると洗面所に行ってうがいと手洗いをする。今日は畑に手伝いに行った帰りなので顔についた土汚れを綺麗に落とす。服も着替えたほうがいい。  祖母と祖父は畑仕事の後片付けをしてから帰ると言ったので帰ってくるのは一時間後くらいだろう。母は七時、父は七時半。残業をしなければこの時間に帰ってくる。俊哉は階段を上って自分の部屋に行き、犬の絵がプリントされているTシャツに七分だけのズボンに着替えた。五月だから洋服選びは楽だ。  今日は水曜日。春になってから毎日のように畑に通っているが友達がいないわけではない。たまたま同じクラスになった健吾(けんご)浩人(ひろと)とは仲がいい。健吾は二年生のときも同じクラス。浩人は同じ通学班だ。三人で畑とは反対方向に歩いて十分のグラウンド付きの公園でサッカーボールを使ってよく遊んでいた。
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