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結局、三人で収穫作業をした。すぐに夕方の音楽が流れる。俊哉は先に帰った。水道で長靴を洗い、家にあがってうがいと手洗いをする。我慢していた涙がぽたりと洗面所に落ちた。
七時になって母が帰って来た。俊哉はソファで項垂れていた。
「ただいま。俊哉、なにかあったの?」
「ううん。ただ疲れていただけ。お母さん、今日の夕飯はなに?」
「麻婆豆腐。野菜も食べなくちゃ栄養が偏るからキャベツでサラダを作ろうか。ドレッシングは俊哉の好きな胡麻ドレッシングにしてあげる」
麻婆豆腐は好きだ。胡麻ドレッシングのサラダも。だけど食欲が湧かない。憂鬱そうな顔をしたせいか母が顔を覗きこんだ。俊哉は視線を逸らした。
夕飯を食べていると祖母が言った。
「明日は大学病院だから畑仕事はなしにするよ。雨が降るらしいしちょうどいいね」
「運転もあるし私もついて行くからね。夕方には帰れると思うよ」
祖父がそう言って俊哉に向かって目を細めた。俊哉はうんと頷いた。祖母が大学病院でよく見てもらって腰がよくなるといい。
今日もお風呂に入ってから宿題をした。青虫のこともだが、なぜだか理央のことが気にかかる。今日も内職をやっているのだろうか。
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