キャベツ畑

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 次の日、登校時に浩人に挨拶をしたら聞こえなかったのか無視をされた。俊哉は青虫の話をしなかったことを誤ったが浩人は道路に落ちている石を蹴って「ふん」と言っただけだった。  学校に着くと少し遅れて健吾が来た。俊哉は健吾にも謝った。健吾は手で俊哉を振り払うようなしぐさをした。 「怒っているの?」 「……」  健吾は無言で浩人のところへ行った。そして俊哉に聞こえるような大声で言った。 「あんな虫が触れるなんて気持ち悪いよな」  俊哉は心臓に槍が刺さったように傷ついた。涙が出そうになるが学校で男子が泣くわけにいかない。何事もなかったようにランドセルから教科書やノートを取り出す。宿題の漢字の書き取りも引き出しに入れた。思いたくないが俊哉は青虫が原因でいじめられ始めているのだと分かった。青虫は好きなのにそれがいけないだなんて。  国語の時間になった。担任の先生が教壇に立って(みんな)を見まわす。 「宿題はきちんとやって来たかな? 忘れた人は手をあげて」  理央のことが気にかかるが後ろの席なので見えない。先生がうんと頷いた。 「忘れた人はいないわね。じゃあ後ろから集めて」  理央はやって来たようだ。先生が家に電話したのだろう。そう思っていると後ろからプリントが回って来た。理央のプリントは漢字の書き取りが最初の三文字しかやっていない。全部で十五文字あってそれを一行書き取りする中の三文字だ。先生は授業中に宿題のチェックはしないが後でバレるだろう。俊哉は心配になったが今は理央のことを考えている場合ではない。健吾と浩人に無視されているのだ。
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