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外は雨がしとしと降っている。梅雨にはまだ入っていないが、むしむしした感じは梅雨のようだ。今日は学校が終わったら早く帰って家で漫画でも読んでいよう。俊哉はそう考え黒板の文字をノートに書き写した。
学校が終わって下校時間になった。健吾と浩人とは口をきかずに終わった。黄色い傘をさす。雨脚が段々と強くなっている。いつもは浩人とお喋りしながら帰るのに今日は無言だ。一緒に帰っている大輔という一組の男子が始終、不思議そうな顔をしていた。
祖母と祖父は六時に帰って来た。暗い顔をしている。俊哉は嫌な予感がした。
「おばあちゃん、病院どうだったの?」
「脊椎腫瘍だってさ。俊哉には難しい病気だね。腰にできる癌だよ。検査、検査で疲れたけど分かって良かったよ」
「癌って、おばあちゃん、重い病気じゃないか」
「大丈夫だよ。ただおじいちゃんとも話したんだが、私たちも歳だしキャベツの有機栽培をやめようと思うんだ。青虫を取るのも大変だしね。農薬を使おうと思う」
俊哉はショックに次ぐショックで何も言葉が出なくなった。学校では友達に無視され、祖母は癌。キャベツ畑は青虫がいなくなる。
「今あるキャベツは有機栽培で育てるよ。農薬を使うのは来年からだ。俊哉には今まで通り手伝ってほしい」
「うん」
「来週また検査に行くんだ。その後に入院となると思う。おじいちゃんといいキャベツを育ててくれ」
祖母はそう言うとキッチンへ行き冷蔵庫からプリンを持って来た。
「おやつだよ。病院の帰りに美味しそうな洋菓子店があってね。俊哉はプリンが好きだろう」
食欲はないが祖母の気持ちは嬉しい。食べてみると滑らかで優しい味がした。
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