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先輩の横顔
「どうしたんです?」
その次の日。俺はバイトの時間に普通に出勤した。すると更衣室のドアの外で二〜三人が突っ立っている。不思議に思って俺は若松っていうおじさんに、何してるのかと聞いた。
「吉池のやつ、一昨日大事なものをなくしたらしい」
「大事なもの? 財布とか携帯?」
「いや。草花だってよ。彼女にじゃないの?」
「へぇ……そうなんですか」
「でもよ。二日探しても見つかんないんだと。ここじゃねぇんじゃないかと言ったんだけど、『いや、ここだ』って言ってきかねぇんだよ」
「……はははっ。そうなんですか。でも花なら別の店でも買えますよね」
「普通はな。けどアイツのいう花は特注だったらしいよ」
ーー特注? 彼女に宝の山のサプライズ? いやいやそれなら直接ダイヤを渡すか。
どっちにしても返しに行かなくて良かった。矢部が言ったとおりバカ正直に返しにいったら『おまえーーッ!』って首根っこ掴まれて投げ飛ばされてたわ。このまま放っておこう。
「そういや吉池の探してる草花ってな、十万もするんだってよ」
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