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「驚いたな……。なんでその名前を知ってるんだ?」
そう返すりく先生は、いつもと少し様子が違って見えた。思わず素の部分が出てしまったのかもしれない。
それよりも問題は私の質問だ。なぜかパッと頭に浮かんだ人名。先生の反応から正解を引いたと感じたが、自分でもそれが誰を指しているのかわかっていない。どうして私は「七星」という名前に辿り着いた…?
「え、えーと、知っているわけじゃなくて、その、当てずっぽうというか勘というか…」
「勘だとしても、無意識的に判断材料を組み立てていたんだ。その過程、すごく気になる。教えてくれないか」
普段の茶目っ気は見えず、いつになく真剣な声色だった。思わずその雰囲気に気圧されてしまう。
私は少し考え込み、周りの生徒が居なくなったことを確認して話し始めた。
「…★のシールはただ単に不思議の目印とも取れますけど、それなら『?』のシールとか、何かしら不思議に関係のあるマークを選ぼうと、私だったら思うんです。
ただの考えすぎかもしれないですけど、でも、ここまで来るうちに、どことなく不思議を作った方と私は価値観が似ているような気がしました。
私と同じ価値観なら、何の意味もなく★マークを使うはずがない、と。
それで、★に意味があるとするなら、不思議全部で星が七つ、『七星』となる…と考えたのかも…しれません……」
言葉にして出していくと案外頭が整理できてスッキリした。それに、結構納得のいく答えではないだろうか。
ちらと先生の顔を伺うと、再びさっきと同じような驚き方をしていた。短くも長く感じる沈黙に、少し不安になってくる。
「…あの、間違ってましたか」
「いや……俺にはわからない。でもその考えは確かに当たってそうだ」
わからない?なんで?
「え、いやあの、先生が作っ、七星さんじゃないんですか?」
「…?先生は中井だよ。中井陸。あれ、言ってなかったっけ」
嘘…え、っていうことは犯人(作者)は二人いたってこと!?そんなのわかるわけ…いや、機械に詳しいって点で作者は理系だと考えられるのか。英語教師の陸先生は文系、その食い違いから二人目の可能性。いやでもでも、陸先生が単に機械に詳しいだけとも考えられるんじゃ……。
んんあーもう、つまり私にはわかりようがなかったってことじゃん。なんか悔しい…。
何も言わず呆けている私を見て「ふふっ」と笑みをこぼし、陸先生は話を続ける。
「実を言うと★のマークの真意は先生もわからないし、そもそもそんなこと気付きもしなかったんだ。主犯は先生じゃないしね。
…だから、本人に聞こう。今日の夜、時間ある?」
「あ、はい…ありますけど…」
「じゃあ、二十時くらいに正門前に来てくれないかな。あいつも呼んでおくから、三人で、話をしよう」
そう言った先生の声はどこか嬉しそうな、楽しそうな調子だった。
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