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遂に顔を合わせたわけだが、それほど自分の感覚に変化はない。当の本人は、 「はぁ~。仕事長引いちゃって、走ってきたんだ。座らせてくれぇ」 と、自販機でジュースを買ってベンチに座っていった。  んんん、なんか違う。なんかもっと、シリアスな感じになるかと思っていたのに。 「じゃあ俺達も二杯目飲もうか。同じのでいい?」 「……はい…いただきます…」  ホットミルクティーをちびちび飲んでいる間、二人の会話を静かに聴いていた。  近況の報告やプライベートの小話で笑い合う二人を見て、学生の時もこんな感じだったんだろうなと容易に想像がついた。そしてやっぱり、羨ましく思う。  話題が学生時代の思い出話になり、あれこれ話しているうちに最後はこの休憩場所に焦点が当たった。そしてその焦点は、次に私の方へ。  陸先生の助けも借りつつ、私はここに辿り着くまでの経緯(いきさつ)を七星さんに話した。先生と同じく熱中症について謝ってくれたり、これまた先生と同じく男子トイレの件について驚いたりしていた。  そして私は遂にあのことを尋ねる。 「七つ目の不思議は、なんですか」  七星さんは先生と目を合わせ、こくりと頷いた。そして… 「「う君さがんがめきていいよよ」」 ……二人同時に喋った。 「おい陸。今のは俺が言うアレだろ」 「いや、『こくり』って頷いたじゃん。俺が言うのかと思ったわ」 「あ、あの…」 「はぁー。…わかったよ、陸からどうぞ」 「よしきた。ん、ううんっ。  内海さん、七つ目は……内海さんが決めていいよ」  実はさっき何となく聴き取れていた。やはりそうだったか。 「あ………はい。でも、まだなんとなくしか思いついてないですけど」 「それをこれから詰めていくんだ。あぁ、別に今日だけじゃなくてもいい。また、集まろう」 「うん。俺も仕事忙しいし住んでるとこちょっと遠いけど、実家すぐそこだから割と顔出せるよ」 「そうそう、こいつの実家、横に工房あるから何でも作れるんだよ。機械仕掛けなら心配せずに頼っていいからね〜」 「何でもは言いすぎだ。材料が手に入る物だったら、な」  私抜きでも凄まじいスピードで決まっていく予定に目まぐるしくなる。すると、七星さんの雰囲気が急に変わったのを感じた。 「さて、それで……  君は、どんな不思議が欲しい?」  どきりとし、私は中身が半分ほど残っているスチール缶を一気に呷った。  体の暑さは更に上がる。  不思議。とは違う、私の理想の不思議。  お手本を見てきた私は今、どんな不思議を作る…? 「奈菜()の、不思議は……」
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