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1か月後、元の世界に無事戻った翔太は、転校した中学でいじめのない平和な毎日を送っていた。
生まれ変わった彼は、毅然として行動した。
いじめホットラインに電話したり、母親にもいじめを打ち明けて一緒に担任と話し合ったりした。
その結果、可能なら転校するのがよいだろうということになり、住まいも新しい中学の学区内のマンションに引っ越した。
ある日の夕方、友人の家から帰宅した翔太は、母が台所で夕食の支度をしているのを見て「今日は帰り早いね」と嬉しそうに言った。
母の隣に並んで立った彼は「あれ、お母さん、背縮んだ?」と素っ頓狂な声を上げた。
「いやね、縮んだなんて。あんたの背が伸びたんでしょ」
と笑う母の声がグレタの声と似ていることに、翔太は今さらながら気付いた。外見は長身スレンダーなグレタとは正反対で、小柄でぽっちゃりしているのだが。
母が今まさにボールに卵を割り入れようとしているのを見て、翔太は「あ、僕に割らせて!」と頼んだ。
卵を手にすると、あのたまご展示室で見た卵たちが、記憶の中にひしめくようによみがえってきた。
特に宇宙の卵の光線は次元の壁を突き破って、翔太を刺激した。
たまごの展示室での経験に拍手を送るように、翔太は勢いよく音を立てて卵を割った。
(了)
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