第三章『機械仕掛けの悪意』

31/54
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/334ページ
 パッションビューティの本社ビルの右隣に建つ白金色(プラチナ)に輝く超高層ビルの存在は、桜も以前から言及していた高級社員寮だ。  桜のような一般平社員の住む左隣の煉瓦造りの社員寮マンションとは、比べ物にならないらしい。  カリスマ的な魅力と人気を博すカルミアとアマリリスなら、豪邸一軒家住まいだろうと思ったが、今の時世を考慮すれば当然かもしれない。  茉莉花も思ったことを、桜はより説得力のある言い回しで同意した。  『確かにUV渦の感染リスクを考慮すれば、通勤の手間と時間は省けるし、アイドル・モデルの生活支援もできるから合理的ですねっ』  『そうね。別の言い方をすれば、会社にとってってこと』  しかし、カルミアはその点に難色を示したいらしく、快活な彼女の表情に影が差した。  少し雰囲気の変わったカルミアの言葉を皮切りに、イベリスも包み隠さない口調で告げた。  「この仕組みを利用すれば、アイドル達の仕事中だけでなく、私生活までほぼわけだね」  「監視って……何のために?」  「UV対策の一環だと言えば、会社の人間は清掃や食事提供なり、何かしら口実を付けて部屋に入れる……もちろん、自室で亡くなっていたアイドル達の“こともね……警察にバレる前に」 ・
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!