余命宣告から

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「まずは、長時間の作業は今の体力では無理があります。できるだけしっかり睡眠はとって下さい。あとは、朝晩は冷え込みますので風邪を引かないように。一番重要なことは、灰を吸い込まないようにして下さい。とにかく、マスクなどをして注意をして下さい。今は進行が早まらないように願っています。いつでも抗がん剤治療を受ける気になったら連絡を下さい。日高先生も望まれていますよ」 「分かりました」  涼太朗は素直に返事をする。  果歩との生活で、少しでも長生きしたいと思うようになっていた。  作品も果歩が来てから、以前よりも創作意欲が湧き、満足のいく作品が仕上がっている。大袈裟かも知れないが、今回の穴窯作品が成功をしたら、もう陶芸に関しては思い残すことはないと思っているのだ。  どちらかといえば、果歩の存在の方が未練を大きくする。  ふたりは、それぞれの思いを胸に病院を後にするのだった。
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