余命宣告から

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《奇跡の夜》  そして、何とか交替で火の番をし、1週間で焼成作業を終えた。  あとは、そのまま冷めるまで数日待つのだ。  高木と佐藤も、一段落しこの日の夕方には一旦帰って行った。  久しぶりに落ち着いたふたりの時間。  この日は夜も暖かい風が吹いていた。  空を見上げると満月。山小屋の前に置かれたベンチで、温かい紅茶を飲みながら並んで空を見上げるふたり……。  澄んだ空気に満天の星空。  体は疲れているはずなのに、達成感からか疲れを感じない。言葉は交わさなくても、通じ合っている不思議な感覚。声も出さないが不思議と同時に見つめ合う。そして、お互いが引き寄せられるように口づけを交わす。  涼太朗にとってはファーストキス。今が運命の瞬間だとふたり引き寄せられる。  言葉を交わすこともなく立ち上がり、手をつなぎ山小屋の中に入る。  向かう先は、涼太朗の寝室。  果歩にとっては、病室感覚だった涼太朗の部屋は、今は神聖な場所に感じる。  戸惑う気持ちも躊躇する気持ちも全くなく、ふたりはベッドでキスの続きに没頭する。  涼太朗には何もかも初めてのはずが、誰かが操っているかのように、スムーズに進む行為……。  果歩は涼太朗を感じ、涼太朗も果歩を感じる。病気の体が嘘のように愛し合う。  ベッドで繰り広げられる愛の行為。  ふたりは、そのまま朝を迎える……。
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