余命宣告から

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《決断》  数日後、いよいよ作品を取り出す。高木も佐藤もやって来た。 「いよいよですね」  高木は期待に満ち溢れている。 「お手伝いさせていただくたびに、この瞬間が楽しみです」  至って冷静な涼太朗とソワソワして涼太朗に寄り添う果歩。 「じゃあ、開けますね」  涼太朗の窯開きを見守る。  そして、涼太朗がひとつずつ取り出す。 「「ほぉ~」」  取り出すたびに高木と佐藤が感嘆の声を上げる。 「綺麗~」  果歩は素直に感動する。  どれもこれも素晴らしい作品に仕上がっている。そして、今回の作品の中でも一際大きい皿と花瓶がまだ出てきていない。  灰の中から皿を取り出し窯から出てきた涼太朗が、太陽の下で灰を払った瞬間、「これは!!」と興奮した高木と「素晴らしい!」と佐藤の声が重なる。  絶妙な色合いに焼き上がった皿は、世間の注目を一身に集めること間違いなしの仕上がりだ。  オークションでは、億の値がつくのは間違いない。 「先生!こんなに素晴らしい作品を見たことがない。本当、感動です」 「本当に。お手伝いしただけですが、自分が誇らしいです」 「思っていた通りの出来で良かった。でも、僕は花瓶が一番の自信作なんだ」  最後の作品を取りに窯に入った涼太朗をみんなが無言で見守る。
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