余命宣告から

31/37
1702人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
《9カ月》  三度目の抗がん剤治療を受けるため、また入院をしている。今回も、果歩も一緒だ。病院の看護師達はふたりの仲睦まじい姿に、素敵な夫婦だと認識している。  更には、果歩の人柄に惹かれ看護師達は、果歩を見かけると話かける。同じ看護師ということもありすっかり打ち解けている。  抗がん剤治療を受けて苦しむ涼太朗を支え続ける姿、いつでも明るく気丈に振る舞う姿に感銘を受けている者も少なくない。  そんな果歩が病院の廊下でしゃがみ込んでいる。見つけた看護師が慌てて声を掛ける。 「果歩さん、大丈夫ですか?」 「…。ええ」  顔面蒼白な果歩が答える。 「大丈夫じゃないですね。とにかく、空いているベッドに寝て下さい」 「でも、涼太朗さんに少し出ると言って来たから戻らないと……」 「そんな顔で戻ったら、余計に心配されますよ。私から声を掛けておきますからとにかくこっちへ」
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!