余命宣告から

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 産婦人科での診察が終わり、体調も少し回復した果歩は涼太朗の病室に戻った。  果歩が病室を長時間空けることはない。涼太朗には看護師から少し睡眠を取っていると伝えられていた。聞いていても果歩の顔を見るまでは安心出来ない涼太朗は、まだ怠いだろう体をベッドの上に起こし、果歩の帰りを今か今かと待っていたのだ。 「果歩さん。良かった」  顔を見て安堵の表情になる。 「すみません。涼太朗さんは大丈夫ですか?」 「果歩さんがいないと落ち着かない」 「そう言ってもらえるなんて光栄です」 「顔色が少し悪い?」 「それには理由があるんです。涼太朗さんにお話があります」 「??ああ」 「実は……」  少し口ごもる果歩。 「……」  果歩の様子に不安を感じる涼太朗。 「私のお腹に涼太朗さんとの赤ちゃんがいます」 「えっ?」  ポカンと口を開けて固まる。 「悪阻のような症状があったんです。で、師長さんがすぐにこの病院の産婦人科を受診させてくれて、3ヶ月って言われました」 「あの時の子だよな……」  複雑な表情だ。 「喜んでくれないんですか?」 「それは、嬉しいに決まってる。恋愛さえしてこなかった俺が、果歩さんに出会い人を愛することを知ったんだ。その、愛する人の子」  涼太朗は、無意識のうちに熱烈な告白をしているが、本人は全く気づいていない。  聞いた果歩は、顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。 「?果歩さん大丈夫?顔が真っ赤だよ」 「それは、涼太朗さんが愛の言葉を囁くから」  今頃気づいた涼太朗まで赤面するのだった。
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