1659人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
産婦人科での診察が終わり、体調も少し回復した果歩は涼太朗の病室に戻った。
果歩が病室を長時間空けることはない。涼太朗には看護師から少し睡眠を取っていると伝えられていた。聞いていても果歩の顔を見るまでは安心出来ない涼太朗は、まだ怠いだろう体をベッドの上に起こし、果歩の帰りを今か今かと待っていたのだ。
「果歩さん。良かった」
顔を見て安堵の表情になる。
「すみません。涼太朗さんは大丈夫ですか?」
「果歩さんがいないと落ち着かない」
「そう言ってもらえるなんて光栄です」
「顔色が少し悪い?」
「それには理由があるんです。涼太朗さんにお話があります」
「??ああ」
「実は……」
少し口ごもる果歩。
「……」
果歩の様子に不安を感じる涼太朗。
「私のお腹に涼太朗さんとの赤ちゃんがいます」
「えっ?」
ポカンと口を開けて固まる。
「悪阻のような症状があったんです。で、師長さんがすぐにこの病院の産婦人科を受診させてくれて、3ヶ月って言われました」
「あの時の子だよな……」
複雑な表情だ。
「喜んでくれないんですか?」
「それは、嬉しいに決まってる。恋愛さえしてこなかった俺が、果歩さんに出会い人を愛することを知ったんだ。その、愛する人の子」
涼太朗は、無意識のうちに熱烈な告白をしているが、本人は全く気づいていない。
聞いた果歩は、顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
「?果歩さん大丈夫?顔が真っ赤だよ」
「それは、涼太朗さんが愛の言葉を囁くから」
今頃気づいた涼太朗まで赤面するのだった。
最初のコメントを投稿しよう!