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すると路地裏に1人の青年が入ってくるのが相手の肩越しに見えた。 「逃げろ」 と土方は対峙しながら青年に向かって声をかけたが、青年は何も見えないかのようにこちらに向かって歩いてくる。 すると、土方と対峙していた浪士がくるっと土方に背を向け、 「どけー」 と大きな声で言いながら、青年の方に刀を上段に構えたまま走っていく。 土方は、青年から今まで感じたことの無い凄まじい気を感じた。 青年が、刀の柄に手をかけたことだけ見えたが、次に見た光景は浪士が腹を押さえて倒れて気絶し、青年が刀を鞘におさめるところだった。 青年は、何も無かったかのように土方の方に歩いてくるが、先程の凄まじい気ではなく、爽やか風が伝わってくる。 (何が起こったんだ) と思考がまとまらない土方は、剣先を下に下げたままの状態でいたが、 「君」 とだけ声をかけ、刀を鞘におさめた。 「はい」 と青年は返事をし、土方が次の言葉が出ないでいると、 「あっ、斬ってはいません。  峰打ちです」 と青年は言った。 「助けてくれてありがとう。  俺は新撰組の土方だ」 と言うと、 「僕は、幕臣平川の次子平川優之進です」 と言って、深く頭を下げた。 「是非礼がしたい。  飯でもどうだい?」 と土方が聞くと、 「いいえ、お礼などいりません」 と平川は答えた。
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