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「ならば、お茶でも」 と土方が言うと、 「お菓子はありますか?」 と平川の顔に笑みが見え、 「あぁ」 と土方が答えると、 「それなら行きます」 と平川は、満面の笑みで答えた。 「土方さん」 と隊士を率いてやってきた斉藤が、土方に声をかけたので、 「平川君、少し待ってもらえるか?」 と聞くと、 「はい」 と平川は答えた後、 「あっ」 と先に見える藤の花を見つけ、 「あの藤の花を描いています」 と言って歩き始めた。 「あいつは?」 と怪訝な顔をした斉藤が聞くと、 「彼が一撃であの手練れの者を倒したんだ」 と土方が答えると、 「あいつが」 と斉藤は、びっくりした顔で言い、 「そうなんだ、俺にも彼の動きが早くて全く見えなかった」 と思い出しながら土方は答えた。 「できれば隊に入れたい」 と藤の花を見ながら絵を描き始めた平川を見て言った。 「平川君、行こうか」 と土方は、斉藤とともに平川の背後から声をかけ、絵を覗き込むと絵心の無い2人でもあまりの素晴らしさに驚いた。 同時に絵から人を優しく包み込む気を感じた。
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