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「平川君、待たせたね」 と言いながら、土方が斉藤と一緒に部屋に入ると平川は先程の藤の絵を描いていた。 「いいえ」 と平川は、筆を置き、絵をしまおうとしたので、 「平川君、その絵を売ってくれないか?」 と土方が聞くと、 「まだ色つけしていませんが」 と平川が答えたので、 「俺は今のがいいんだ。  いくらだい?」 と土方が聞くと、 「土方さんが決めてください」 と平川は、笑顔で答えた。 土方は、棚から金子を取り出し、 「これでいいか?」 と聞くと、 「はい、ありがとうございます」 と平川は、金子を受け取り、土方の座っている前に絵を置いた。 改めて見ると、先程よりも気が強く感じられる。 隊士が、お茶と饅頭を持ってきたので、 「俺からの礼だ」 と土方が言うと、 「いただきます」 と平川は言って、前に置かれた饅頭をとても美味しそうに食べ始める。 「土方さーん」 と沖田が言いながら、部屋に入ってきて、饅頭を食べている平川を見て、 「君が今話題の子だね」 と言い、 「沖田です」 と言って、頭を下げた。 平川も立ち上がり、 「平川です」 と言って、深く頭を下げた。 「ねえ、よかったら一回立ち合ってほしいな」 と沖田が言うと、 「いいですよ」 と平川が答えたので、 「竹刀持ってくるよ」 と沖田は言って、部屋から出ていく。 「いいのかい?」 と土方が聞くと、 「はい」 と平川は答え、饅頭を1つ手に取った。
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