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「平川君」 としばらくして竹刀を持った沖田が再び部屋に現れ、縁側に竹刀を1本置いた。 見ると永倉も一緒に来ていた。 「はい」 と平川が立ち上がったので、土方と斉藤も立ち上がり、縁側に永倉と一緒に座る。 平川が、竹刀を持って庭に出ると土方が感じた凄まじい気が漂ってくる。 「これは」 と永倉が言うと、土方はうなずいた。 沖田もいつもの間合いよりも遠くに立っている。 平川が、中段に構えると一層気は増していった。 沖田も中段に構えているが、間合いをつめず、その場から動かない。 すると、 「僕の負けだ」 と沖田は言って、平川に向かって頭を下げて竹刀をおさめる。 「ありがとうございました」 と平川は、深く頭を下げて竹刀をおさめる。 「平川君は、全く隙が無いね」 と沖田が縁側に座りながら言うと、 「僕は、沖田さんの突きをどうやってかわそうかしか考えていませんでした」 と平川は言い、 「突きって分かっていたなら僕の負けだね」 と沖田は、笑いながら言ってから、 「土方さん、平川君に隊士の稽古つけてもらおうよ」 と言ったので、 「平川君、どうかな?」 と土方が聞くと、 「分かりました」 と平川が答え、 「金はもちろん払うよ」 と土方が言うと、 「ありがとうございます」 と平川は、笑顔で答えた。
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