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翌日から時間がある時に平川は、隊士に稽古をつけ始めた。 沖田は、平川が気に入ったようでずっと一緒にいる。 斉藤もそうである。 隊士達に分かりやすく説明している姿を見ていた土方に、 「土方さん」 と永倉が声をかけた。 「どうした?」 と聞くと、 「近藤さんが呼んでます」 と永倉が言ったので、稽古の様子を見ている近藤の所に向かった。 「歳、彼かい?」 と近藤に聞かれ、 「そうです」 と土方が答えると、 「隊に入ってもらいたいな」 と近藤が言ったので、 「聞きましたが、あっさり断られました」 と土方は言った。 「俺から頼んでみよう」 と近藤は、近くにいた隊士に平川を呼びに行かせた。 近藤は、腕を組んで座り、土方が隣りに座って待っていると、 「失礼します」 と言って、平川が斉藤と沖田と一緒に部屋に入ってきた。 平川は、近藤の前に座り、 「平川優之進です」 と言って、深く頭を下げた。 「新撰組の近藤だ」 と近藤は言ってから、 「先程稽古をつけている姿を見ていたが、素晴らしい腕前だな。  是非隊に入ってもらいたい」 と言うと、 「昨日も土方さんに申し上げましたが、僕は絵を描くことの方が好きなのでお断りします」 と平川は答えた。
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