Prologue

1/4
前へ
/33ページ
次へ

Prologue

ゆらりゆらり、揺れて昇って消えゆく煙は空に散る。 その棒一本で快楽に浸り、肺を(おか)して息をするんだ。 付いたリップが光を反射して、また自分をあざ笑った。 息苦しい世の中から背を向けるように。 息苦しい世の中の縛りから抜けるように。 息苦しい、この自分の性格を踏みにじるように。 私が息をするために。 「こーんなところで女の子がたばこ吸ってていーんですかー?」 ふと聞こえてきた言葉に肝が冷え、とっさに振り返った時、『あ、しくじった』と思った。 顔を自分から見せてしまったら駄目じゃないの。 けれど、時すでに遅し。 コンビニのある通りの路地裏で19時、人気なんてなかったはずなのに、私はあっさりとその人に見つかっていた。 「なーにしてるの、かいちょ?」 手首をやんわりと掴まれ、その指先で挟まれているたばこ。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加