Prologue

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とりあえず、この体勢で火のついているものを持ってるのは危ないと思い、掴まれている腕を抜けば、その手は簡単に外れた。 一緒に持ってきていた携帯灰皿にその灰を押しつぶして仕舞う。 まだ少し、残っていたんだけどなぁ。 「私を煽ってくる割にはあっさり手を離すのね」 「会長は逃げないでしょ。いい子ちゃんだし」 「今の見ていい子に見えてるの?」 「少なくとも地面に落として火消しすることはしなかったじゃん、ね」 にっこり、いつも通りに笑うその愛嬌のある顔が、今は暗闇の中に浮かんで怖く見えてくる。 いや、私が不安で仕方がないから、そう見えるだけかもしれない。 「どうせ逃げても、明日も会うもんね」 「……」 「それなら今口止めした方が、効率いいもんね?」 どう口止めしようかと悩んでいるところにそう言われてしまえば、腹も立つ。
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