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私は知っている。
この男には『好きな人がいる』ことを。
「かーいちょ」
他に誰もいない生徒会室の中、今日も私は彼に呼ばれる。
作業を中断して見上げれば、すぐ隣にその男はいて。
私は"その時間"が来たことを察して彼を見上げた。
降ってくる唇に、私は何も言わずに瞼を閉じる。
額に、頬に、鼻先に……キスするならさっさとして終わって欲しいのに、この男はまるで愛しい人に接するかのように。
耳をはみ、瞼を撫で、そしてようやく。
そうして私はまた、弱みをこの手に、彼の欲に溺れていく。
「ちょ、腰撫でないでよ」
「え、だめ?」
「そもそも、キスだけって話でしょ」
「俺もうお預け食らって1ヶ月も経ってるんだけどなぁ」
そう言って机の上に座るその男、副会長の筧明楽という男である。
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