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この教室で行われている授業は、通称卵の授業と呼ばれている。
全国の小学4年生を対象に、夏休み明けに一斉に行われる特殊な授業である。
発表した後で、文字が書かれた卵を割って、丸呑みするまでが一連の流れ。
子どもたちが自由に夢を語る時間――と表向きには言われているが、実際は違うことを大人たちは知っている。
この卵は数十年前に発見された特殊な卵。
解析の結果、子どもたちの秘めたる潜在能力を伸ばす力があることが解明されている。
文字を書き、それを発声し、その卵を食べることで、卵の力とその子の潜在能力が合致した場合に、必要な能力を著しく伸ばすことができる代物である。
生徒たちは順々に卵にマジックを走らせ、そして声を上げていく。
「わたしはアイドルの卵です」
「僕は弁護士の卵です」
野球の選手、女優、教師、警察官――様々な卵が誕生しては、子どもたちの身体の中に取り込まれていく。
授業は順調だった。
そして、順調に終わるはずだった。
ある生徒が発言するまでは――。
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