ブルーシート

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ブルーシート

 今で言う、体の関係。セックスフレンド。通称セフレの関係が続いていた。  ただ俺は本気で希のことが好きだった。どんな関係でも希と一緒にいれるなら俺には関係なかった。失うくらいなら、傍にいれるならどんな関係でもよかったのだ。  俺は何度もこのままではダメだと思い、他の女性へ気持ちを向けようと努力したこともあった。だが、何度努力しても結局は希への気持ちが高まるだけだった。自分へ好意を持ってくれた方へ対しても、同様であった。  俺にとって希という存在は全てになっていた。希が笑顔でいてくれるなら、どんな困難も乗り越えれた。俺自身、高校でいじめにあったことがあった。かわいい顔の人に対してかわいいと言ったら、その子のことが好きだと広まり、その子周辺の人からいじめを受けた。  だが、俺には全然効かなかった。希という存在がいたから乗り越えられた。  俺と希の関係は、ずっと秘密のまま、高校三年最後の夏まで続いていた。会えない時は、夜中まで電話をしていた。電話の最後はどっちが電話を切るかでいつも喧嘩をしていた。  先に切った方が相手への好きな気持ちが薄いっていう謎のルールが二人にあって、お互いが切ろうとしなかった。日が変わろうとも、相手が寝ようとも切らなかった。どちらかの携帯の充電がなくなるまで、切ることはなかった。  そうした関係を続けていた俺と希は共に部活を引退した。その後俺は再度告白した。 「好きな気持ちは変わらない。俺と付き合ってほしい」  沈黙が続いた。 「ごめんね。付き合えない」  希は下を向きながら答えた。 「そっか。分かった」  それ以上は聞けなかった。受け止めることが出来ずに、悔しくて泣いた。  その日のことを俺はずっと後悔している。告白していなければ、あの時もっと深く聞いていれば、自分と希の未来は変わっていたのか。どうにもならないことを永遠に後悔することとなった。  希とは自然と会う回数は減っていった。会っても本当に体だけの関係になっていた。だが俺の希に対する気持ちは消えることはなかった。  外が高校生での最後の冬を明ける準備を始めていたある日の夕方時、希からメールが入る。 「彼氏が出来た。一個上の先輩。ごめんね」  すぐに希に電話をし、初めて問いただした。 「なんで。うちらの関係はなんだったの。俺の気持ちは知っていたでしょ」  希は無言だった。 「ごめんね」  ただそれだけだった。 「分かった。ただ最後でいいから顔見て言って。夜七時に幼稚園の汽車で待ってる」  そう伝えた。 「行けない。その時間帯彼氏の家にいるから」  と言っていたが、俺は遮るように 「それでも俺は待ってる。遅くなっても構わない。希を信じてる」  と勝手に伝え電話を切った。  実際その瞬間は希を信じてた、必ず希は来てくれると。俺は夜七時に汽車に到着するように家を出た。  その日は春の手前なのに、外はマイナス気温で吹雪だったことを覚えている。夜七時前に幼稚園の汽車前に到着したが、汽車はブルーシートで囲われていた。新学期が始まるまでは、閉鎖しているようだった。思い出の汽車の形を手でなぞりながら、涙が流れた。
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