見えない壁

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彼は疲弊していたがいたって明るい人だった。 絵が好きだと自分に嘘をつき、 父の好きな絵で芸大生になった。 いやなことは人が傷つく事、 だが彼は自分を犠牲にする事をいとわなかった。 彼はてんかん発作という病気で運動を禁じられ、夢を失って芸大にいた。 「僕は絵で一人前になる。」 そんな皮肉を本気で信じる強い心を持っていた。 何故なら母を失ったおかげで家族の大切さを 知ったからだ。 だから彼は強いのだが それは個々の強さだ。 仲間とか友達とか、大切なものを 大事にして生きてはいたものの そんな風に見られるほど表情は豊かではなかった。 そんなせいで傷ついても誰も助けてくれることがないのだが、大切なのは家族だろ...と胸をかせるほどの人間だったので そのストレスは自分を傷つけることで晴らしていた。そんな折である。
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