突き破る

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再び周りは騒然となったが、何故かその金のロケットは、その鋭い先端を、少しずつ引っ込めて行く。完全に見えなくなると、ぽっかりと空いた穴が国民達を睥睨してしまい、〈侵入者ども〉が飛び込んできた。 しかしそれも束の間だった。 直ちに透明で粘性のある〈脂〉が詰め込まれたからである。その〈脂〉に触れた〈侵入者ども〉は次々と倒れ、物言わぬ死体となったのだ。 そして特殊部隊の出番はなく、修復のための部隊が〈脂〉の力を借りながら、せっせと穴を塞いでいた。 「た、助かった……また先月みたいな大惨事にならなくて」 「ほんとだよ。今回は先端だけだからこの程度で済んだけどね」 「壁が薄いままなのは良くないかもね。まあ壁はゆっくりでも分厚くする予定だったみたいだし、次はきっと大丈夫だろ」 国民が三々五々に安堵の声を漏らす。その日はそれ以外何も起こらず、修復を終えた部隊は撤収し、再び壁を厚くする工事が続くことになった。 さらに1ヶ月後には、ようやく壁も完成し、ちょっとやそっとのことでは破れないように補強もされた。時折ロケットを覆う壁の中を、ロケットが出たり入ったりすることはあっても、その壁を突き破ることはもう無いと認識しつつある国民は、今まで通り平和な生活を続けていくことだろう。
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