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「なっ……、トガミ!!」
短剣を自らの腹へ突き立てたトガミは、低く呻きながらその場に崩れ落ちた。
その腹部からじわじわと血がしたたり落ちていく光景を目の当たりにして、リオンはすぐさま彼のもとに駆け寄る。
「なぜだ……! おまえは、私を殺すつもりだったのでは……!?」
「はは……そう、ですけど。この計画は、少しずつ国を乗っ取ってこそ、なんですよ。途中でバレてしまったら、そこで終わり……ミーア様に思惑を知られ、ここまで逃げられてしまった時点で……っ、もう、僕の負けだったんです」
ごほごほと咽るトガミの口から、真っ赤な血が流れ落ちていく。予想だにしなかった展開に、リオンやミーアだけでなく周囲を取り囲んでいた男たちまでもが戸惑いざわついた。
「まだ計画を遂行するつもりなら、あんな風にぺらぺらと、動機まで喋るわけがないでしょう……本当に、リオン殿下は根がお人よしなんですから……」
「っ……、もういい、喋るな!」
「そういうわけにも、いきませんよ……殿下に、いくつか聞いてほしいことがあるんです。死にゆく配下への餞別ってことで、許してはもらえませんかねえ」
「なっ……駄目だ! おまえにはきちんと、この謀反の罪を償わせる。だから、私の許可なく勝手に死ぬことは許さない……!」
声を震わせながらトガミの体を抱えるリオンを見て、ミーアはぐっと唇を噛み締めた。おびただしい量の血が流れ落ちて、それはリオンの服をも赤く染めていく。だんだんと血の気を失っていくトガミの顔を見たミーアは、震える体を叱咤してこの場から駆け出そうとした。
「わ、私、お医者様を呼びに……!」
「いいんです、ミーア様。……僕は、ここで死ぬ。どうか、死なせてください」
力無く笑うトガミに、ミーアは言葉を返すことができなかった。
いつから死を覚悟していたのか、彼の顔は今まで見たことのないほど穏やかで清々しくさえ見える。
「僕は、疲れていたのかもしれませんねえ……たったひとりで、この計画を遂行することに。今までしてきた、何もかもが無駄になったというのに……今は、なぜだかほっとしているんですよ」
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