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16.心
翌朝、ミーアが目を覚ますと、隣にリオンの姿は無かった。
昨夜は声を押し殺しながら泣くリオンに抱きしめられたまま、いつしか眠りに落ちていた。彼はもう執務に向かったのだろうかと考えながら、のろのろと起き上がって身支度を整える。
着替えを済ませ、廊下に出ようと立ち上がったところで、軽く扉を叩く音がした後にリオンが部屋に入ってきた。
「おはよう、ミーア。早いな、もう身支度を済ませたのか」
「あ……おはようございます。リオン殿下こそ、こんな時間からもうお仕事ですか?」
「ああ……そんなところだ。それよりミーア、もう少ししたらきみのお父上がこちらに見える予定だ。それまでに、きみの荷物をまとめておいてほしい」
「えっ……お父様が? もしかして、また何かあったのですか?」
昨日ルカが賊に襲撃されたばかりということもあり、ミーアは思わず表情を曇らせる。しかし、リオンは緩く首を振って「大丈夫だよ」と優しくミーアに語りかけた。
「お父上は無事だ。そんなに不安そうな顔をしなくてもいい」
「そう、ですか……? あ、昨日の脅迫状のことは、もう皆さんに伝えたのですか? 賊がこの城に潜んでいるかもしれないと……」
「いや。不確かなことを言っても、いたずらに皆の不安を煽るだけだろう。今夜、陛下を含め重臣たちとの会合があるから、そこで話すつもりだよ。今後のことはそこで決める予定なんだが……その前に、きみに大切な話がある」
そこで言葉を切って、リオンはいつになく真剣な眼差しでミーアを見つめた。そして、ゆっくりと口を開く。
「ミーア。きみとお父上には、今日限りでこの城を出てもらう」
「……え?」
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