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その言葉に、ミーアは勢いよく顔を上げる。
そこには、穏やかでありながらも何かを強く決意したような迷いの無い瞳でこちらを見つめるリオンがいた。
ミーアを物のように扱い辱めた男とはまるで別人のようなその眼差しに、一瞬息をつくのも忘れる。
「――それ、は……私と、離縁をするということですか?」
「……ああ、そうだ」
苦しげな表情で頷くリオンに、ミーアは敬語も忘れて問いただす。
「ど、どうして!? 私がどれほど嫌だと言っても、決してこの城から出してはくれなかったのに! 父を人質に取ってまで私をここに閉じ込めたのに、どうして今さら……!?」
悲痛に叫ぶミーアを宥めるように、リオンがその肩を引き寄せて抱きしめる。それから、彼もまた悲痛な声音で言い募った。
「きみの命が危ないんだ。どうか、何も聞かずに逃げてくれ」
「そ、そんなの、勝手すぎます! 私たちの家や畑を取り上げてまでここに連れてきたのに、今度は出て行けだなんて……!」
「それは……本当に、すまなかった。だが、きみたちが今後の生活に困るようなことには絶対にしない。私から金銭的な支援は続けるつもりだし、お父上の薬なども……」
「違うわ! 私が聞きたいのは、そんなことじゃない! わ、私は……っ」
言葉を詰まらせながらも、ミーアは自分の思いを伝えようと必死で彼に向って叫んだ。そんな彼女の姿に、リオンはただ悲しげに目を伏せる。
「……分かってくれ、ミーア。もうこれ以上、きみを傷つけたくないんだ」
震える声でそう告げたリオンに、ミーアは言葉を失う。
彼は一層強い力でミーアの体を抱きしめ、ぽつりぽつりと感情を吐き出すように語り始めた。
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