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その夜になると、テレビで総理大臣の緊急会見が始まっていた。
テレビには総理大臣とキュリー夫人とエジソン博士が映っていた。
「みなさん、落ち着いて聞いていただきたい。あの玉子を調べたところ、どうやら玉子が大きくなるにつれて、地球が少しずつ萎んでいくことがわかりました。宇宙人の秘密兵器なのか、はたまた異次元から来訪した未知の怪物なのか、皆目、見当がつきません。しかしこのままでは、地球が消失する可能性があります。そこで全人類の皆様は、月へと移住することが決定しました! 月面には全人類が移住したとしても十分なスペースがございます。安心して誘導に従ってください」
ポカンとする家族を横目に、僕は新聞の制作を始めた。
翌朝になると、サイレンが鳴り響き、たくさんの兵隊がぞろぞろと道路を走る様子が二階の窓から見えた。
ピンポーンとチャイムが鳴る音がして、家族で外に出てみると、エジソン博士とダーウィンの姿がそこにあった。
「アイザック! さっそく月面に退避することになったわよ。家族みんなも支度してもらって」
「わかった、父さん、母さん、荷物は持たなくていいから、そのまま迎えの車に乗って」
両親は目を白黒させながらも、エジソン博士から事情を聞き、すぐに車に飛び乗った。
車の中でエジソン博士から説明があった。
「相澤家の皆さん、これから宇宙空港に向かいます。そこですぐに宇宙服に着替え、ロケットに搭乗してください。すでにたくさんの方々の出発が始まっています」
「あの、月には家はあるのでしょうか?」
「家というほどのものがありませんが、月面では超特急で居住区の建造が始まっています。当面の生活には困りませんので、ご安心ください」
宇宙空港にはたくさんのロケットが並んでいた。
僕たちはぶかぶかの宇宙服に着替えると、ロケットに乗り込んだ。まだ海外旅行もしたことなかったのに、いきなり月旅行をすることになるなんて想像もしていなかった。
ロケットはすぐに発射され、ジェットコースターみたいなGが体に押し寄せてきた。
あっという間にロケットは宇宙空間に飛び出し、窓から地球を眺めることができた。
「ご搭乗の皆様、月面到着まではしばらく時間がかかります。その間ゆっくりとお休みください。お食事は少しの間、我慢をしてください。トイレはございません。排尿等は宇宙服で処理いたしますので、そのままなさってください」
ロケット内で案内があったけど、まあシートは座りやすいし、たぶん夜間バス旅行よりは楽なのかもしれないと思った。
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