いつかその日まで

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私達は、空港の一角にある、どこにでもあるような、何の変哲もない普通のソファに座っていた。特別フカフカなわけでもなく、特別座り心地が悪いわけでもなく。普通のグレーのソファ。 「わざわざ来てくれてありがとう、朝も早かったし別に良かったのに。」 「そりゃ来るでしょ、大事な彼氏とのお別れの日だしね」 「ちょっと離れるだけじゃん、絶対また会いに来るから。お別れ、なんて言わないでよ」 「ごめーん」 本当にまた会える日は、来るのかな。 「何時出発の飛行機だっけ?」 「えっと、9時28分に搭乗開始だから…一時間前にはもうゲートの方に行って手荷物検査を初めてないとかな。――だから、あと30分くらい。」 彼がスマホをポケットから取り出して、そう言った。 あと、30分。 あと、30分で、お別れなのだ。大好きな彼氏は、アメリカで仕事をするのが夢だった。その夢が叶うんだから、応援しなければ。でも、行ってしまえばもう会えない。帰国の目処も今はたってない。 結婚の話はでなかった。 優しい彼のことだから、彼なりに気を使ってくれたんだと思う。 大学の同級生で、この間卒業したばかりの私達。夢を叶えたのは彼だけではなく私もだった。長らく夢見ていた公認会計士の試験に合格したのだ。 日本で夢を叶えた私、アメリカで夢を叶えた彼。 会うことはできるかもしれない。恋人でい続けられるかもしれない。でも、それは永遠じゃない。 彼のことを信じてないわけじゃなくて、私に自信がないから。どうしようもなく不安になってしまう。私達が一緒にい続けられることは不可能なんじゃないか、なんてことが頭をよぎってしまう。 彼は、これからも私が彼の恋人でいてほしい、そばにいてほしい、こんなことで別れたくない、って言ってくれたのに。不安ばかりの私に対して、「僕らなら大丈夫だよ」、なんて軽く言えてしまう彼。いい意味で楽観的な考えを持ってるところも大好きだ。
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