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「あのっ…!」
君の声を聞いて、ちらっと顔をあげてみる。
何かを私に言おうとしているけれど、ためらっているような表情の君。それから目をつぶって、大きな深呼吸をした。
「ア、アメリカには米国公認会計士…ってのがあるらしいねーーーーー。そのー、あのーーー、そしたら…一緒に住めるねーーーー…」
あまりにもぎこちなく言うものだから、私は笑ってしまった。
「一緒に住めるねーーーー?」
「彼」がもう一度その言葉を口にして、私は一縷の光が差し込んできたような気分になった。
私は何をあれほど悩んでいたのだろう。
彼はちゃんと私との将来を思い描いていてくれたのに。
きっと、今の今まで言い出せなかったのは、無理やり私をアメリカに連れて行きたくなかったから、でしょ?
そういう気遣いができるところがたまらなく好きなんだ。
「待って待って待って、泣かないで! ごめん、ごめん、急に変なこと言い出しちゃって、ごめん!」
慌て過ぎだよ、もう。
控えめにハンカチを出してくれるところとか、もう全部大好きなんだ。
好きだから涙が出てきちゃうんだよ。嬉しいの。
彼が渡してくれたハンカチで涙を拭ってから、私は彼の手を握った――
「一緒に住めるね。」
――もちろん、満面の笑みで彼の目をじっと見つめた。
白黒の世界に、初めて色がついたときのような表情――いや、子供が、待ち望んでいたシュークリームをやっと食べられていたときのような満面の笑みを浮かべる彼。
何かを言うわけでもなく、彼は私をぎゅっと抱きしめた。
ぬくもりが、心地いい。彼の匂いも好きだなぁ。
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