いつかその日まで

7/10
前へ
/10ページ
次へ
「あのっ…!」 君の声を聞いて、ちらっと顔をあげてみる。 何かを私に言おうとしているけれど、ためらっているような表情の君。それから目をつぶって、大きな深呼吸をした。 「ア、アメリカには米国公認会計士…ってのがあるらしいねーーーーー。そのー、あのーーー、そしたら…一緒に住めるねーーーー…」 あまりにもぎこちなく言うものだから、私は笑ってしまった。 「一緒に住めるねーーーー?」 「彼」がもう一度その言葉を口にして、私は一縷の光が差し込んできたような気分になった。 私は何をあれほど悩んでいたのだろう。 彼はちゃんと私との将来を思い描いていてくれたのに。 きっと、今の今まで言い出せなかったのは、無理やり私をアメリカに連れて行きたくなかったから、でしょ? そういう気遣いができるところがたまらなく好きなんだ。 「待って待って待って、泣かないで! ごめん、ごめん、急に変なこと言い出しちゃって、ごめん!」 慌て過ぎだよ、もう。 控えめにハンカチを出してくれるところとか、もう全部大好きなんだ。 好きだから涙が出てきちゃうんだよ。嬉しいの。 彼が渡してくれたハンカチで涙を拭ってから、私は彼の手を握った―― 「一緒に住めるね。」 ――もちろん、満面の笑みで彼の目をじっと見つめた。 白黒の世界に、初めて色がついたときのような表情――いや、子供が、待ち望んでいたシュークリームをやっと食べられていたときのような満面の笑みを浮かべる彼。 何かを言うわけでもなく、彼は私をぎゅっと抱きしめた。 ぬくもりが、心地いい。彼の匂いも好きだなぁ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加