いつかその日まで

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私は彼からもらった、もう暖かくなってしまったグレープジュースを飲んだ。 「ん! 意外と美味しい」 今まで頑なに飲んでこなかったのを、ちょっと後悔した。 さっき、彼と一緒に座っていたソファの前を横ぎった。このごくごく普通のソファが、「彼をお見送りしたときに座ったソファ」に認定されるのが、愛おしかった。 そよやかに頬にあたる風が心地よい。 周りの人々の話し声が明るいBGMの様だった。 空港で光る明かりは、とても暖かい色をしていた。 一度は考えたこともあったけれど、きっと別れるのが彼にとってベストな選択だと思って、米国公認会計士を目指し、彼についていく、ということは諦めてしまっていた。 でも、挑戦してみよう。そう私は決めた。 時間がかかると思う。心が折れるときもあると思う。 それでも私は頑張りたい。
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